料理を楽しむ

食文化について

「酒は百薬の長」「お茶は養生の仙薬」とも言われます。

これらのものが私たちの健康に尽くしてきた役割は言い尽くせないものがあります。焼酎にはとりわけ、血栓症の予防をする働きが他の酒類に比べて優れていることが知られています。「血液サラサラ」にいいと言われるゆえんです。また、「酔いざめさわやか」というのは、かつての「さつま白波」のキャッチフレーズでしたが、焼酎は、ビールなどの醸造酒に比べると、体内でのアルコール分解が早いと言われています。日本人の健康志向が本格焼酎志向と合致したのは間違いありません。鹿児島県が長寿国であるというのも本格焼酎のおかげでしょうか。ただ、「薬になるものは毒にもなる」ものです。何事も、ほどほどというのが大事です。

 

 

焼酎のお湯割りや水割り

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本格焼酎には、独特の風味と旨味があります。
また本格焼酎は、お湯や水で割ってもさらに風味がひきたつという珍しい酒です。
お湯割りは、かつての「さつま白波」のロクヨンが一世を風靡しました。焼酎六分、お湯四分の割り方です。これが濃い人は、五分五分でも、あるいは四分六分でも、お好みに応じてお楽しみ下さい。中には、三分七分くらいにしてこれを「乙女割り」と称する方もいるようです。
お湯割りは、まずお湯から、水割りは焼酎から、これがより美味しく飲むための裏技です。

 

 

黒ジョカと焼酎の前割り

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前割りといっても、何も航空便のチケットではありません。焼酎を前もって水で割っておき、それを黒ジョカで燗をして、差しつ差されつ、これが何といっても醍醐味ではないでしょうか。薩摩の酒器には、黒薩摩の黒ヂョカと杯であるチョク、またカラカラと呼ばれる船徳利に似たのもあります。鹿児島らしいといえば、ソラキュウがあります。独楽のように逆円錐形のチョクですから、座りのない杯です。これに注がれた焼酎は、いやおうなく呑まざるを得ません。「ソラッ」と注がれ、「キュッ」と呑み干すところからこの名がついたのです。また、鹿児島の銘産でもある錫の酒器も、なかなか味わい深いものです。

 

 

 

十人十色 こんな飲み方もある

北海道では、番茶割りといってお茶で焼酎を割って呑む人もいます。また、牛乳割りを楽しむ人もいます。
お湯割りの焼酎に、梅干しを入れたり、蜂蜜を加えたり、キュウリを入れたりする人もたまに見かけます。また、肉桂やウコンやキハダと呼ばれる木のかけらを入れて呑む人もいます。どんな飲まれ方にも、ビクともしないでその本来の風味を失わないというのが、本格焼酎の強さと優しさでしょうか。

 

 

どんな料理にも合う焼酎の旨味

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県北出水市の小原地区に「味噌なめて」という開墾碑があります。 「味噌なめて晩飲む焼酎に毒はなし煤(スス)け嬶(カカァ)に酌をさせつつ」という狂歌が刻まれています。戦前の作とはいえ、つましくて温かい情景が浮かぶような作品です。 味噌をなめつつ焼酎を飲むというのは、小土器についた味噌を肴に酒を飲んだ鎌倉時代の『徒然草』の中のエピソードを思い出させます。甘い酒には、辛い塩味のあるものが格好の肴となったのでしょう。酒枡の角の塩もその名残りです。 ただ、旨味のある焼酎は、辛味のある肴や料理だけでなく、どんな料理ともマッチします。和食、洋食、中華、エスニック、どんなメニューも引き立ててくれ、そして気分まで引き立ててくれるのが本格焼酎です。

 

 

本格焼酎と薩摩の暮らし

鹿児島の暮らしに根付いた本格焼酎を、こよなくうまく表現している言葉の双壁が、「だれやめ」と「まつる」という言葉でしょう。
「だれ」とは「疲れ」のことです。「やめ」は文字通り止め。つまり疲労回復のための晩酌を「だれやめ」といいます。
「まつる」というのは、お祭り騒ぎをすることでなく神仏に捧げるという意味です。御神酒などのお下りを頂くのも、これと似たような言葉です。喜びは倍加し、悲しみは半減してくれるのが焼酎です。
「どら、まついもんそかい」と言うのは、「一献いただきましょうか」という意。この時、薩摩の人々は、自分を超えた生きる喜びと見ず知らずのうちに向き合っているのかもしれません。

 

 

焼酎とふるさとの料理

もともと料理は、内陸で発達しました。パリや京都がそうです。言葉は悪いですがそこでは、傷みかけたものをいかに美味しく食べさせるかに調理人たちは腐心したのです。
しかし薩摩では冬でも青々とした田畑や温かい海があります。海山の幸が、すぐそこにあるのです。それをさっと食卓に出す。その意味で薩摩の料理には、さほど難度の高いものはありませんでした。
それをうまく表わしているのは「無塩(ブエン)」という言葉です。トレトレの活きのよい魚は、塩をうたなくてもよいことから「無塩(ブエン)」と呼ばれました。「無塩(ブエン)」とは刺身で食べられる魚のことです。
また正月前や田植え後の宴など、格別のハレの日には、飼っている鶏が調理される事もありました。

 

 

カツオ節 ツケアゲ ガランツ

保存食や加工食といえば、海のものでは、ガランツといわれる干しイワシや枕崎のカツオ節、野のものでは大根や高菜などの漬物、加工食品では、各地の豆腐(オカベ)やツケアゲでしょう。
ツケアゲは、魚のすり身に味付けをして揚げたものです。鹿児島で過ごしたこともある向田邦子さんはツケアゲを「私のマドレーヌ」と名付けています。
「石蕗(ツワ)の一日干しを 豆腐(オカベ)と〆(シメ)て 好きなとのじょと オハラハ― 丘登り」
これは「おはら節」の歌詞ですが、これに焼酎でもあれば言うことなしの行楽気分だったのかもしれませんね。
料理の難度はともかく、素材の風味をうまく活かす、これに勝る贅沢はありません。

 

 

新酒どきと季節を越える熟成焼酎

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お盆すぎ、火入れをした蔵は、十月、新酒の香りにつつまれます。 「今年は どうかな」 ときめきながら人々は、新酒の封を切るのです。薩摩酒造では、新酒祭りが行なわれます。新酒にはやはり新酒なりの華やいだ香りがあります。 一方、薩摩酒造では、長期貯蔵の熟成焼酎も造っています。寝ている間も成長しつづけるのが、本物の証でしょうか。コクとまろやかさをました熟成焼酎には、風格すら漂うほどです。 新酒には新酒の、旬の頃には旬の、そして熟成酒には熟成の香りと品があるのが、薩摩酒造の本格焼酎です。